短編

対立


あらゆる女性を魅了してやまない容姿を持つミストレーネ・カルス、通称ミストレは、黄色の歓声をまといながら、王牙学園の校舎を歩いていた。
花弁をまき散らしながら歩いているのではないかというような雰囲気。
それが、ふと揺らいだ。

女子生徒に向けられる優雅な微笑みが、目の前の人物を認めて不敵な笑みへと変わる。

ミストレの方へ向かってくる一団、それを率いるはという女子生徒。彼女を取り巻くのは、ミストレと同じく皆女性。

互いに存在を認めると、取り巻きを含めて足が止まる。
両軍ともに、進軍を停止する。
そう。この両軍は対立していることで至極有名。鉢合わせしてしまったからには、戦争が勃発するのだ。

「やぁ、確か……さんだったかな?」

先手を打ったのはミストレ。口調は穏やかだが、明らかな挑発だった。
けれど、は、これしきのことで怒りを露わにする馬鹿ではなかった。

「あぁ、2番手で有名なミストレーネ・カルスだったな。貴方の名前はよく覚えている」

にっこりと微笑み、向けられた言葉の刃を、たやすく相手の喉元に返してみせた。
けれど動じることなく、彼は次の攻撃を放つ。

「覚えていてくれるとは光栄だね。……その肩書き、じきに更新する必要があるけど、君の脳のスペックで対応しきれるかな。俺の知り合いの技術者が、どんな使えない脳でも、機械一つ埋め込めば使える脳にしてくれるよ。紹介しようか?」

要約すると「脳みそぐちゃぐちゃにしてやろうか」という事だ。
相変わらず、趣味が悪い。

「なるほど、金属のガラクタを埋め込んで、貴方程度か。『まだまだ改善の余地があるようだ』と、知り合いの技術者とやらに、意見を伝えておいてくれないか。なかなか興味深い」

細く笑みを浮かべれば、ミストレは不愉快を露わにする。
手が出るかとは身構えた。

すると、時が空気を読んだのか。
水を差すように予鈴が鳴り響いた。

残念ながら時間切れ、両軍は何事もなかったかのように静かにすれ違う。

すれ違う際に、ミストレはの耳元で低く囁いた。






「いつか、お前の喉を食いちぎってやるよ」


両軍の対立は、ますます深まるばかり。
総大将の首をとるのは、果たしてどちらか。