隣のあいつは憎いヤツ

人の縁は不思議なものだね。

なんという縁だろう。
まさか、本当に源田くんと一緒のクラスになるなんて。

彼と目があった。
少し笑ってる。

カッカッカッ……、先生が黒板に私の名前を書く。


「転入生のだ。みんな仲良くしてやれよ」

「よろしくお願いします」


軽く自己紹介をすると、自分にあてられた席へと座る。
隣は源田くんだ。


「よろしくな。

「こちらこそ。さっきは助かったよ。ありがとう源田くん」


新しい学校ライフのスタートは上々。
楽しく過ごせそうと思っていた。


……思っていた、のはホームルームが終わるまで。


「源田! 辞書かしてくれ!」


あわただしい足音とともに現れたのは、今朝私を置いてきぼりにした嫌なヤツ。そう、佐久間次郎。


「…………お前、このクラスか」

「あんたには関係ないでしょ」


チッと舌打ちが聞こえる。
だったら来なきゃいいじゃん。
二度と来るな。

微妙な空気があたりに広がる。
それを断ち切るかのように、源田くんが辞書をヤツの前に差し出す。


「急いだ方が良い。もうチャイムが鳴る」

「……あぁ」


教室を出ていく間際、ヤツと目が合う。
フンと顔を背けるので、こちらも負けじとあかんべーをする。

そんな私の様子を見て、源田くんがそっと尋ねる。


「佐久間を知っているのか?」

「……家が隣なの。引っ越したその日から喧嘩した」

「そうか」


チャイムが鳴る。
教科書を机の上に出していると、


「すぐに突っかかるヤツだが、根は良いヤツなんだ」


ぽつりと、そう源田くんはこぼした。