隣のあいつは憎いヤツ
朝っぱらから
ガタガタガタガタガタ……
……まったく、朝っぱらから一体何事だ。
無視してやろうとも思ったが、うるさいので仕方なく起きる。
目をこすりカーテンを開ける。
向かいの窓から棒を出している佐久間と目が合う。
「朝っぱらから、うるさいじゃない!」
「いつまでも寝ているお前が悪い」
「良いじゃない! どうせ自宅謹慎中なんだから!」
「良くない。今からそっち行くから、着替えておけ」
……は?
今、なんて?
私が聞き返す前に、佐久間は窓を閉めて部屋を出て行ってしまったらしい。
今から、そっち、行く?
「ちょっと! どういう事!」
ふと、我に返る。
今、寝起きで、寝癖にパジャマ。
文句は山ほどあるが、言っている暇はない。
早くしないとアイツが来る!
ピンポーン
早いわ! 馬鹿じゃないの!
* * *
「で、何しに来たのよ」
準備なんてできてないのに、母さんが勝手に入れた。
佐久間も遠慮なんてこれっぽっちもしないで、私の部屋に堂々と入って来た。
「もう少し片づけておけよ」
キョロキョロと部屋を見回す無礼者に、手元にあったクッションを投げつける。
「あ。このペンギンのクッション良いな」
容易く、キャッチされてしまった。
「だから、何しに来たのよ!」
クッションに抱きついている佐久間に、苛立ちがつのる。
すると、佐久間は鞄からプリントを取り出し、私に差し出す。
「……何コレ?」
「反省文。それを書いたら謹慎3日で良いってさ」
「いや、別に一週間でも全然……」
「いいから書け」
シャーペンを取り出して、私に押しつける。
「こんなの適当に書いとけば良いんだから、さっさと書いちまえ」
「私の話、聞いてた?」
「……早く」
全く話を聞いてない佐久間は、なおも自分の主張をする。
「早く、学校に来いよな」
何処までも自分勝手なヤツ。
だけど、ホント、根は悪くないヤツなんだな。
照れ気味に顔を伏せてる佐久間に、これ以上噛み付くようなことは言えなかった。
コンコン
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ドアが開き、母が顔を覗かせる。
「ー。次郎くんから聞いたわよ。さっさと反省文書いちゃいなさいね。それと、今夜は佐久間さん家で夕食を頂くことになったから」
……はい?
思わず、佐久間を見る。
と、顔を逸らされる。
どういう事か説明しろや。
「……母さんがさ」
どうやら、佐久間ものり気じゃなさそうだ。
母と子で食事会。
なんか、面倒くさそう。