夢・小説書きさんに100のお題

001絆創膏 /チェレン



「あ、チェレン!良いところに!」

ぴょこんとアンテナのようにはねた髪が、彼に代わって返事をする。

「いや〜君は実に良い。必要としている時に現われるんだから」

にへらと笑うと、彼は実に面倒臭そうにこちらに歩みよる。

「随分と無茶をしたようだね。体中傷だらけじゃないか」

「いや、ちょっとポケモンセンターまでショートカットしようかと思いまして」


バトルしたくないから、草むらとトレーナーを避けて崖を滑り降りたと言えば、彼は額に手を当てた。


「というわけで、絆創膏を一つ頂戴」

「さも当然、僕が絆創膏を持ってるように言わないでくれる?……ていうか絆創膏一つでなんとかなるレベルじゃないよね?」


呆れ半分、怒り半分で彼は面倒臭そうに鞄をあさる。

「とりあえず、手の出血は止めたいんだよね」

「足の出血の方が酷いよ」

「それより手よ。こんな血でベタベタした状態でモンスターボールを触るのは嫌なの」


チェレンだって分かるはずと、顔を見やれば………………鬼のよう。何故?

そして、強いデコピンを私に見舞う羽目に……。だから何故?


「世間では君の事を馬鹿と言うんだよ」


痛い!と、悲鳴をあげる私を知らんぷりして、乱暴に消毒液を擦り付け、キツく縛るようにガーゼを止める。


「あのね。僕たちはもう一人前なんだよ。誰かを頼ってちゃいけないんだ。自分で頑張らなきゃ駄目なんだよ。だいたい君は……」


くどくどと説教を聞くこと数十分。

なんだかんだ言って、チェレンは次の町まで一緒にいてくれた。ついでに別れ際に救急セットまでくれた。

「僕たちは一人前だ。自分で何とかしなきゃいけないんだよ」


そう言って去って行く。


「それでも、きっとチェレン離れはできないんだろうな」


お互いに離れられないんだろうな。