呪われてゴルバット

身体検査



……太ったわけじゃない。

そう、太ったわけじゃない。
翼の重さが加算されただけ。

ほんと、それだけなのだ…………と思う事にしよう。

「えーとの体重は……」
「口にしないで下さい!」

乙女の秘密を堂々と口にしようとするグリーンさんを、私は慌てて止める。

現在、グリーンさんは眼鏡に白衣をまとい、すっかり研究者モードになっている。

レッド曰く「…………白衣を着たグリーンは……止まらない」という事らしい。
泣こうが喚こうが効果はなく、無理矢理、測定されたので、納得できる。


「んで、スリーサイズが……」

「だから言わないでください」


ニヤニヤと緑色の瞳が笑う。

……気に入らない。

足を踏みつけてやれば、嫌な笑みは消え、代りに苦痛の表情が浮んだ。

「いてぇ!……おい、レッド。コイツのトレーナーだろ。ちゃんと躾ておけよ」

ささやかな仕返しのつもりだろうか。
私が不機嫌に眉をひそめるのを分かっていて、彼は言う。


「…………」


レッドは暫く首を傾げ、何やら思案する。
そして、何を思ったのか、私の前に立つと、私の頭に片手をおいた。
何をされるのかわからず、ビクビクしていると、頭上の手は乱暴に髪を掻き回した。
そして落ち着いた声が降ってくる。


「…………まさか、ゴルバットが『ふみつけ』を覚えるなんてね」


どうやら、褒めているらしい。
が、
私は全く納得できない。


「だーかーらー!ゴルバットっじゃないって言ってるでしょう!」


レッドの手を払い落とす。すると、彼は私を抱き締め、一言。


「……おとなしくして」


彼の言霊と、細い割に強い腕に縛られれば、私はもう動けない。


貴方に従うつもりなんてないのに。



その後、レッドの言うとおり「おとなしく」グリーンの身体検査をうけた。


この時は、これといった異常はみあたらなかった。



だが三日後、私の身体は急にいうことをきかなくなってしまった。