デュエル学園シリーズ

クラスメイト




 ぜぇぜぇと、肩で息をする私を含めるオベリスク・ブルーの新入生。
 な、何で入学早々走らなきゃいけないの!

「ここがオベリスク・ブルーの寮だ。
 各自、男子寮と女子寮に別れ、部屋の手続きをしろ」

 あんなに走ったっていうのに、総代表は平然としている。
 ……くそぅ。

「俺と同じオベリスク・ブルーとなった以上、
 無様な姿をさらすようなことはするな。では解散!」

 それだけ言い放つと、バッと制服を翻して行ってしまった。

 うぅ、これからあいつと同じクラスなんて、……先が思いやられるよ。

「よぉ。お前さっき海馬に絡まれてたガキじゃねーか」
「ひゃぁっ!」
「そんなにビビんなよ」

 いきなり後ろから肩に手を置かれ、耳元で話しかけられれば驚くのが普通だろう。
 
「俺様はバクラ。お前は?」
「……
か。お前災難だったな。入学早々海馬に目ぇつけられるなんてよ。
 あいつはオシリス・レッド、オベリスク・ブルー、ラー・イエローの総代表の中でも、
 一番手厳しいって評判だぜ」

 んな評判いらなくない?

「えと、バクラくん」
「海馬で困ったことがあったらいつでも相談しに来いよ。
 俺様もあいつは気に入らねぇからな」

 ぞくぞくっと、背筋を何かが走る。
 なんだか丁度良い手駒を見つけたと思われてる?

「じゃあな

 うぅ、どうしよう。入学早々あんまりよろしくない感じの人としか会ってない気がする。
 仲の良いクラスメイトとか、できるのか心配になってきたよ。

 不安を抱えながらも、私はオベリスク・ブルーの寮へと入った。
 とりあえず、部屋の手続きをしなければ。







 オベリスク・ブルーの寮は中で男子寮と女子寮に別れている。
 女子寮の入り口のロビーで、部屋の手続きは行われていた。

「二人部屋となっておりますがよろしいでしょうか?」
「あ、はい」

 よろしくないって言っても、一人部屋をもらえるわけではないのはわかってるし。

「それでは、こちらからカードを引いてください」

 って!ここでもカード!?
 何から何まで、カードの引きにかかっているなんて!

 それでも、引かなければ話は進まない。
 カードの上に手を置く。
 その時、背後から制止の声が聞こえてきた。

「あなたが、そのカードを引く必要はありません」
「えっ?」
「なぜなら、あなたが私と相部屋になることは運命によってすでに決められているからです」

 はいっ?

 長い黒髪に褐色の肌の女性。
 彼女はそう言って私に微笑みかけてきた。
 
 ……えと。私にどうしろと?

「ですが、カードを引いてもらう決まりになっておりまして」

 受付が彼女の登場にとまどいを隠せない。
 ……そりゃそうだよね。

「そうですか。では引いてごらんなさい。
 ですが、あなたの引くカードはわかっています。
 私と同じ『恵みの像』」

 私の引いたカード。
 それは、

「……恵みの像」
「ふふ。運命は変わらない」 

 すっと女性は手を差し伸べてきた。

「私はイシズ・イシュタール。
 よろしく
「……こちらこそよろしくイシズさん」 

 あれ?名前言ったっけ?
 疑問に思いながらも私は彼女の手をとった。

「イシズで良いのですよ。
 私達の出会いは運命によって定められたもの。
 これから先、あなたはこのデュエル・アカデミアで人生最大の分岐点を迎えることとなるでしょう」
「えとイシズ?」
「あなたを待ち受ける苦難。
 微力ながらそれに打ち勝つ手伝いをいたします」

 総代表にバクラ。
 彼らとはまた違った意味でイシズは危ない人だと思うんだけど。
 間違ってないよね?

「あぁ。まだ言ってませんでしたね。
 オベリスク・ブルーへようこそ。歓迎しますよ」

 それでも、ルームメイトが好意的なのは良いことだ。
 変な人だけど。








「ここが私達の部屋です」
「へぇ。結構……ていうかかなり広くない?」

 向かい合うようにベッドが二つあり、本棚や机なども割と大きめだ。
 それらを含めても、部屋は二人で過ごすには十分広い。

「デュエル・アカデミアはお金には困っていませんから」
「なるほど」

 部屋半分はイシズの領地だ。
 見れば、古代エジプト関係の置物や壁紙が貼ってある。
 一つ目の模様がいくつもあってなんだか怖い。

 ……うん。見なかったことにしよう。

 ぼふっと自分のベッドにダイブしてみる。
 うわぁふっかふか〜。

「それよりも、荷物の整理がついたら、一緒に食事をとりませんか?」
「良いよイシズ。あ、でも待って私の親友、オシリス・レッドの子も一緒で良い?」

 杏子は今頃どうしてるだろう。

「構いませんよ。ですが、それなら早めに行かなければなりませんね」
「え?なんで?」
「その方はすでに食堂にいるからです」

 イシズの目は一体何処をみているんだろう。
 ちょっぴり不思議だ。
 でもいちいち気にしちゃいけないんだね。きっと。

「ん。じゃぁ早く荷物整理しちゃうね」

 とりあえず、細かなものは後回し。
 だいたいできたら食堂に行こう。


「よぅし!完了!行こうイシズ!」







 食堂に来ると、もうすでに多くの人で賑わっていた。
 杏子に連絡したら、イシズの予知通りもうすでに食堂にいるらしい。

!こっちこっち!」
「杏子ぅ!会いたかったよ!」

 杏子に駆け寄るとぎゅぅと抱きつく。

「こらこら。とりあえず、ご飯とってきなよ。
 えと、そっちがの言っていたイシズさんね。
 私は杏子。よろしくね」
「こちらこそ」

 また離れるのはちょっり悲しかったけど。
 今はとりあえずご飯を確保しなければ。

「うわぁ、どれもおいしそう」
「そうですね。私はカルボナーラにします」
「んー。私オムライスがいいな」

 ご飯を持って再び席に戻ると、そこには先ほどいなかった人たちが私達のテーブルに同席していた。

「ん?こいつが手紙で言ってた杏子の友達か?」
「誰あんた?」
「紹介するわ。手前から順番にアテム・遊戯・城之内。私のクラスメイトよ」

 ということはオシリス・レッドの人たちかぁ。

「それとラー・イエローの舞さんよ」

 すごいなぁ。七人という大勢にもびっくりだけど。
 オシリス・レッド、オベリスク・ブルー、ラー・イエローと3クラス全部そろってるよ。

「よう、久しぶりだなイシズ」
「えぇ、ファラオもお元気そうで何よりです」

 へぇ、イシズとアテム君は面識があったんだ。
 て……ファラオ?

「……いや、だから俺はファラオなんかじゃないって言ってるだろ」
「いえ、あなたは間違いなくファラオです」
「ねぇ、ファラオって何?アテム君だよね?」

 私は先ほど杏子から聞いた名を言って聞いてみる。

「あぁ。どうやら俺が過去のエジプトの王に似ているらしくてな。
 こいつは俺のことをファラオと呼ぶんだ。全くまいったぜ」
「でも似ているっていうなら、そっちの遊戯君の方が似てない?」
「相棒と俺は双子。似ていて当然だぜ」

 そう言ってアテムは遊戯にウインクしてみせる。
 それに遊戯君は笑顔で応える。

「それよりも。なぁ。食事終わったら俺とデュエルしねぇか?」
「城之内くんだっけ?良いよ!私の自慢の炎デッキで燃やし尽くしてあげる!」

 思えばこのデュエル・アカデミアに来てまだ一回もデュエルしていない。
 思わぬデュエルのも押し出に心が躍る。

「ちょっと城之内!あんた午後の授業どうする気?」
も、初っぱなから授業さぼっちゃ駄目よ」

 舞さんと杏子の二人の発言に、私と城之内君の両者は固まる。

「んな!舞、そんなことどーでも……」
「うぅ〜……」
「あんたの成績の心配してるのよ。この前のテスト散々だったみたいじゃない」
「〜〜っ……!」

 うぅ。残念だなぁ。せっかくのデュエル。

「心配はいりませんよ
 この先あなたは彼らと幾度もデュエルを繰り広げることになります」
「……イシズ」
「これは予知じゃありませんよ

 そうだね。今度また誘えばいい。

「それにしても大勢の食事というのはなかなか賑やかなものですね」
「そうだね」

 久しぶりに長い食事の時間。
 それは、次の授業のチャイムが鳴るまで続いた。 




 て、チャイム?



 私達全員遅刻じゃんっ!!
















 登場人物多いと大変だよね。















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