デュエル学園シリーズ
プライド
「貴様ッ!やる気があるのか!」
本日、三度目の総代表の言葉。
もう、うんざりだよ。
「だぁかぁらぁっ!……あのね、総代表。
私もデュエリストなわけでね。自分のデッキにはそれなりに誇りをもってるの!
なんで総代表のデッキを使わなきゃいけないの!」
私達の口論の原因。
それは、タッグデュエルで使うデッキに関してだ。
総代表は私に自分の作り上げたデッキを押しつけてきたのだ。
理由は、総代表の持つブルーアイズ・ホワイトドラゴンを最大限に活かすため。
私と総代表ではデッキの性質はまるで違う。
個人戦であれば問題ないが、私達はタッグで大会に臨むのだ。
まだ先とはいえ、デッキの相性は大会までにできるだけ改善しなければならない。
そのためには、妥協が余儀なくされるのはわかっている。
だが、一方的な妥協の強要。
それは私のプライドが許さない。
「総代表。あなただって他人のデッキを押しつけられるのは嫌でしょうが!
これ以上ない侮辱だって、わかるでしょ!」
「お前のプライド・力量など知れている!
ならば勝利のために!俺の足を引っ張らないためにも俺のデッキを使え!」
どちらも退かない。
「なら提案!私とデュエルして!
負けたら私は総代表に従う。
でも、私が勝ったら貴方は私に従う」
「ふぅん。いいだろう」
よし。
これを機に総代表を黙らせてやろうじゃないの!
VS海馬
「「デュエル!!」」
総代表とのデュエル。
彼のデッキはなんとも攻撃的なものだった。
強大な力、破壊。
敵意むき出しのデッキ。
デッキはデュエリストの心を移す鏡だと聞いたことがある。
彼のデッキは、どうしてここまで攻撃的なのだろう。
まるで、殺される前に殺してやるとでも言っているよう。
なぜ、彼は……。
「フハハハハハハハ!貴様のフィールドには自分の身を守るモンスターも伏せカードもない!
どうやら次のターンで終わりだな!」
総代表のフィールドにはアルティメットドラゴン。
このままじゃ……。
「くっ!私のターン!カードをドロー!」
私が引き当てたカード、それは
『天使の施し』
「魔法カード天使の施し発動!
私はデッキから三枚引き二枚を捨てる!」
「ふぅん。せいぜい足掻くが良い」
『和睦の使者』『使者への手向け』『攻撃封じ』
「…………!」
『使者への手向け』を発動すれば総代表のモンスターを破壊できる!
「どうした!怖じ気づいたか!」
「そう焦んないでよ!」
にやり。
私は不敵に微笑んだ。
見せてあげる!私の力を!
「魔法カード死者への手向け発動!」
バッとカードを天に華麗に掲げ、私は魔法カードを発動してみせた。
手札を一枚捨て、アルティメットドラゴンを撃破!」
「何ぃ!」
「さらに、ホルスの黒炎竜Lv4を召喚!
場に残った守備モンスターを撃破!」
総代表のフィールドに残っていた守備モンスターを破壊し、
私は笑みを深くする。
「モンスターを撃破したことにより、ホルスの黒炎竜Lv4はLv6にレベルアーーップ!
伏せカードをセットしてターン終了!」
私はどうだと言わんばかりにフン反り返って、総代表を見る。
だが、総代表は意外と冷静だった。
「ふぅん。キサマごときが俺のアルティメットを倒すとはな。
ほめてやろう。だが、俺のパートナーとしてはまだまだ力不足だな」
「なんですって!」
総代表は細く微笑むと、ピシッと一枚のカードを指で挟み、私に見せてきた。
「なっ!死者蘇生!」
「蘇れアルティメット!」
総代表のマントがなびき、背後からアルティメットは蘇った。
「さらにガジェットソルジャーを攻撃表示で召喚!」
や、やばい。
「ふはははは!見たか!これがお前と俺の力の差だ!
二体のモンスターのダイレクトアタックでお前の敗北は決定だ!
行け!プレイヤーにダイレクトアタック!」
「罠カード!和睦の使者発動!」
二体のモンスターの攻撃がピタリと止まる。
あ、あぶなー……。
「ちっ。また時間稼ぎか」
「ふん。何とでも言いなさい!
言っとくけど、今の罠カード『落とし穴』だったら、
総代表アウトだからね!」
「お前はそんな運は持ち合わせてないだろう。
それよりも何をぐずぐずしている!
キサマのターンだ!」
それならちゃんとターンエンドって言ってよ。
「か、カードをドロー!」
……………
私のは引いたカードを確認すると、静かに瞳を閉じた。
「どうした!早くしろ!」
「…………サレンダーするわ」
そっと、デッキに手を置き私は敗北を認めた。
「ほぅ」
どうせ嘲笑うのだろうと覚悟を決める。
だが、いっこうに笑い声は聞こえてこない。
どうしちゃったんだろう。
「素直に敗北を認めるのもデュエリストとして必要だな。
ま、俺にはそんなもの必要ないがな」
「それって、けなしてんの?」
「いや。お前とのデュエル悪くなかった。
だが、約束だ俺のデッキを使ってもらおう」
くっ!
この屈辱絶対倍にして返すからね!
「ただし、タッグ戦においてだ。
そして、必要と感じるならそれを元に変えればいい」
へ?
「デッキ構成もできない馬鹿でもなかろう。
もし、より強化できるのならしてみるが良い。
だが、俺の作ったデッキは完璧だ。
それを、強化できるほどのレベルがキサマにはあるか」
何を言う。
「当然!」
気に入らないのは確かだけど、でも自分が言い出した駆け引きだ。
それに、たとえどんなデッキだろうと私は負けない。(…次は)
「なら今日の所はこのくらいにしておいてやる。
だが!週に一回は!お前は俺とタッグ戦に向けての特訓があることを忘れるな!」
「ええええ!」
「今のままではお前は足手まといだ!いいな!」
高笑いとともに総代表は去っていった。
私は総代表に押しつけられたデッキを手に立ち尽くした。
「うぅ……私総代表とはもうあんまり会いたくないのに」
手にしたデッキからは、なにやら男物の香水が微かに染みついていた。
「あぁ。そういや総代表香水つけてたっけ」
これじゃ。いやでも総代表のことが頭をちらつく。
でも、この香りは……嫌いじゃない。
なんだか落ち着くな。
総代表はわざとデッキに香水の香りを移していればいいと思う。