デュエル学園シリーズ
卓球バトル
「はぁ〜極楽極楽♪」
「良いお湯でしたね」
私とイシズ、杏子と舞の四人で、学園内に(何故か)ある温泉に来ていた。
ちょっとお値段高いけど、学園の女子には大人気の温泉だ。
「たまにはこんなところで気を休めるのも良いよね。とも一緒にいられるし」
「私も杏子と一緒なのは嬉しいよ」
ぎゅうっと風呂上がりの杏子に抱きつく。
私も杏子もぽっかぽかだ。
「ま。寮が違う友達同士で来るのには良いかもね」
ラー・イエローの舞に軽く頭を撫でられ、気分は最高。
「あ。私、舞とデュエルしたいな〜」
「良いわよ。風呂上がりに一戦やろうじゃないの」
女同士できゃっきゃと盛り上がっていると、それを邪魔するように声が割って入ってきた。
「ふん。良いご身分じゃねぇか」
「バ、バクラ君!」
振り返ればそこに浴衣姿のバクラ君がいた。
……って、来てたのか。
「この前はよくも俺様を見捨てやがったな」
海に落ちたことをまだ根に持ってるんだろうか。
でも、あれは絶対バクラ君の自業自得だ。
「ちょっと、何に絡んでんのよ!」
舞がそっと私の前に歩み出る。
おぉ!舞、格好いい!
「うるせぇ!てめぇは引っ込んでろ!
とっととをこっちに渡しな!」
私は舞の後ろからヤツに向かってベーと舌をだしてやった。
「ほぉ。良い度胸じゃねぇか。、俺と勝負しな!」
むっ!デュエルか!よし!
やってやろうじゃないのと、左腕に手を伸ばすが、そこにデュエルディスクはない。
更衣室に置きっぱなしだった。
私の馬鹿ぁぁぁぁっ!
「安心しな。今回はこいつで勝負だ」
そう言って取り出したのは卓球ラケット。
え?ましゃか…。
「おいおい。折角の温泉なんだぜ。
こいつをやらずに何をやんだよ」
いや。そうなんだけど。
……う〜ん。
「フン。怖じ気づいたのか」
「そうじゃないけど、私浴衣だよ?」
「見りゃわかる。ちなみに俺もだ」
「いや……こう動くでしょ?」
「たいして色気もない餓鬼が何言ってやがる」
何だろう。ものすごく腹が立つ。
なので、卓球ラケットをヤツめがけてぶん投げてみた。
「ハッ。あたるかよ」
ひょいと軽く避けるからこれまた憎たらしい。
しかし、投げた方向からゴンと鈍い音が響いてきた。
「え」
「相棒ぉぉぉっ!!!!」
まさか。あたった?
「誰だ俺の相棒に傷付けた野郎は!」
すごい形相でこちらに走ってきた人物。
それは紛れもなくアテム君だった。
「バクラッ!貴様かぁぁぁっ!」
「あ?……何勘違いしてやがる」
「ごめんアテム君。そのラケット投げたの私。
こいつに当てようとして……」
アテム君に駆け寄り素直に謝罪した。
すると彼は、それで落ち着いたらしく。
優しく私の頭を撫でた。
「いや。気にしなくて良い。全てバクラが悪いんだろ?俺にはわかってるぜ」
と見事なまでにころりと表情を変えてくれた。
「はぁ!?なんでそうなんだよ!」
「黙れ!お前はすること成すこと全て悪行ばかりじゃないか!
良い機会だ。この俺、オシリス・レッド総代表自ら、お前に引導を渡してやるぜ!」
「ふん。おもしれぇ…やってみろよ」
バチバチと火花散る中、私達女性陣は蚊帳の外。
……そういえば。
「遊戯君大丈夫?」
額を赤くして倒れていた遊戯君に近付き、起こしてみる。
「ほら。こいつで頭を冷やしな」
そう言って舞さんが冷やしたタオルを持ってきてくれた。
「うわっ冷たっ!」
「ご、ごめんね遊戯君」
「あれ。あ、うん僕は大丈夫。それより……」
「アテム君ならあっち」
異次元と化した卓球台を指さし、状況を説明した。
「へぇ〜。面白そうじゃん」
「って、止めなくて良いの遊戯?」
杏子が心配そうにアテム君を見ている。
「アテムはもう一人の僕なんだ。負けるはずないよ」
ぞくり。
何か良くないオーラが遊戯君から見えたけど……。
気のせいだろうか。
「このままではこの勝負、勝敗はつきません」
それまで黙っていたイシズがいきなり割って入ってきた。
「どうして?」
「ファラオと対峙する邪悪なるもの。この二人の力は互角。
勝敗を付けるのなら、何か別の要因が必要なのです」
確かに。
さっきから二人の卓球バトルはずっと高速のラリーが続いていて、一点も点数が入っていない。
このままでは決着はつかないだろう。
「チッ。仕方ねぇ。
おい!こっちにつけ!ダブルスだ!」
「えぇぇぇっ!そんなの嫌だ!それに私卓球下手だよ!」
そんなに下手というわけじゃないけど、この二人のバトルの前では十分下手だ。
「ぐだぐだ言ってねぇで早く来い!この前のパンチラ写真ばらまくぞ!」
「!?!?!?!?」
「ぐはっ!」
その一言で戦況は一変した。
アテム君の手からラケットは離れ、顔面にピン球がクリーンヒットしたのだ。
しかし、私はそれどころじゃない。
「ちょっと!この前のって!」
この前のって、総代表のパートナーに決まったあの時の写真!?
でも、あれはイシズが携帯ごとへし折ったって、言ってたけど。
「メモリーカードは無事だったんだよ。なんなら見せてやろうか?」
「結構です!てか削除してよ!馬鹿!」
「ほら。早く俺様の側に来いよ」
にやりと笑い、私を誘う。
くそ……こいつ悪魔だ。
「うぅ……お、お手柔らかに…お願いします……」
「な、バクラ汚いぞ!」
「別にそうでもないだろ?
こいつが俺様の側にいる分、こっちのリスクの方が高いはずだぜ。
何たって俺様は自由に動けないからなぁ」
じゃぁ何でわざわざ不利になるのに私を持ってくるかな。
「ほらよ。そっちのサーブだ。早く打てよ」
そう言ってバクラ君はアテム君をせかす。
「いくぜ」
バクラと違ってやや軽めのサーブが私の元へ。
「えい!」
そう言って一球返す。
「なっ!」
別に、大した球を返したわけじゃない。
それなのに、アテム君はひどく慌てて何とか球を返した。
「ほらほら。どうしたんだよオシリスの総代表さんよぉ。
左ががら空きだぜ!」
スパンっと目にも止まらぬ、スマッシュをバクラが決めた。
「クククッ。情けねぇな」
どうしてだろう。あっけない。
私が入ってから?
どうして?
「くっ!バクラ!初めからこのつもりで!」
「さぁて。俺様のターン」
そう言ってサーブを打つバクラ君。
迎え撃つアテム君はすごい形相でバクラ君を睨んでいる。
「くっ…!くらえ!バクラ!」
そう言ってバクラ君のサーブをすごい勢いで返すアテム君だけど。
次返さなきゃいけないの私だから!
バクラ君に腕を引っ張られ、私は返ってきた球を体で受けることに。
「きゃっ!」
「しまった!」
アテム君のそんなすごい球。
私がとれるはずがない。
防御も間に合わず。私はただ痛みを感じていた。
「オシリスの総代表さんは、ずいぶんといやらしいなぁ」
バクラ君はそう言って私の赤くなった胸元を手でなぞる。
ビクッと体が小さく震える。
「い、いや違う!バクラ!お前のせいだろう!」
「さぁて、球は何処にいったのやら」
「ちょっ……ちょっと!やっ……なにを!」
バクラ君はそのまま手を浴衣の中へと侵入させ、ゆっくりと体に沿って這わせた。
「バクラ!貴様ぁっ!」
「そう怒んなよ。お前だって正面で堪能しただろ?」
「〜〜〜〜っ!?!?」
アテム君は顔を真っ赤にして黙る。
「ん〜見つからねぇな」
「……もういいから!自分で……」
ゴスッ。
鈍い音が響いた。
と同時に、バクラ君の手は私から離れ、ゆるやかに倒れる。
「大丈夫ですか」
「イシズぅ!」
バクラ君の背後には、ラケットを握りしめたイシズの姿があった。
私は駆け寄り、抱きついた。
「もう大丈夫ですよ」
優しく頭を撫でてくれるイシズが嬉しい。
「アテム最低!」
向こう側のコートからは杏子の怒った声が聞こえてきた。
「いや、だから違うんだ!」
「見損なったよ。君はもう一人の僕なのに」
「誤解だ相棒!」
「情けないよね。これしきのことで。そもそも僕の仇を討ってくれるんじゃなかったの?」
「す、すまない相棒。だが……」
「言い訳するの?もういいよ。僕はもう帰るから」
「待ってくれ相棒!!」
ちょっぴり、アテム君が可哀相に思えた。
「さぁ私達も帰りますよ」
こうして、はちゃめちゃなバトルはあっけなく幕を閉じた。
今回の優勝者は……おそらくイシズだろうと思う。
イシズ姉さん最強・最高!