デュエル学園シリーズ
渡されなかったチョコレート
「キサマぁぁぁぁ!!!!!どういうことだ!!」
キーンと朝から騒音で目が覚めてしまった。
……あぁ、だるい。
目をこすりながらゆっくりとあける。
ぼんやりと見えた有り得ない人影、私のパートナーの海馬瀬戸だ。
夢ではないかと頬をつねってみるが、残念ながら現実だと痛みが言っている。
……どういうことだと、私が聞きたいんだけど。
こんな朝っぱらから。
「……えと、おはよう総代表」
「キサマ!パートナーにチョコを渡さぬとは社会の礼儀も知らんのか!」
「あ……そうそう。今日の特訓で会うし、その時渡そうと思ってたんだけど……」
もぞもぞ、のろのろと、ベッドから起き上がり、鞄の中からチョコの入った箱を取り出す。
昨日渡せなかった総代表の分だ。
「その日に渡さぬ馬鹿が何処にいる!」
「いや、だって総代表台風の目だったし」
黙ってれば美人な上に三乗返しと言われている総代表故に、押し寄せる女子の数がホント半端じゃなかった。
あれに挑む勇気と元気はないし、頑張りたくない。
「んじゃ……おやすみ。私はもう少し寝るから」
「おい待て!」
授業まではまだ2時間近くある。
せめてあと1時間は寝ていたいところ。
寝過ごしてもイシズが起こしてくれるだろうし。
……て?
……イシズ?
あれ?
がばっと起きて隣のベッドを見る。
そこには綺麗に整えられた布団とシーツだけ。
イシズはいない。なんで?
てゆうか、イシズがいないのはこの際良いとして……。
「……総代表。ここは女子寮なんですけど」
「それがどうした!オベリスク・ブルー総代表のこの俺が入れぬ所などないわ!フハハハハハハハ!」
「………………」
……駄目だこの学校。
「……あのさ。用は済んだでしょ?もう帰ってよ」
「フン。この程度のチョコでこの俺が満足できると思っていたのか?
笑わせるな!しかも当日に渡さなかったとは論外だ!」
相当根に持っているらしい。
「……悪かったわよ」
「いや許さんな」
こぉんの〜!我が儘総代表め!
「それじゃ、どうしろと……!」
「そうだな。これで手を打ってやる」
え?これでって?
「ちょっ!何、人のベッドに上がり込んでるの!」
迷うことなく、仮にも女性のベッドに上がり込むなんて!
「前回、折角の据え膳を食い損ねたからな。イシズもいない事だし丁度良かろう?」
「全然良くない!イシズ!イシズぅ〜っ!イシ…んっん〜〜っ!」
生暖かくぬめっとした異物が私の口の中に入ってきて動き回る。
叫ぼうにも叫べず、暴れれば暴れるほど呼吸ができず、苦しくなる一方。
どうすれば良いのかわからず、ただひたすら、私は総代表の胸板を押し返そうと抵抗するが、意味を成さない。
「ぷはぁっ…!はぁ、はぁ……」
「もう少し大人しくしていれば、苦しまずに済んだものを」
「……誰が大人しくなんか!」
「さてと。まさか、これで終わりだと思ってないだろうな?」
「なっ……」
「フン。とんだお子様だな。まぁ良い、この俺が直接教えてやる」
総代表の詰めたい指がそっと胸元を伝う。
下へと降りてゆく指は、パジャマのボタンで一旦動きが止まる。
「あ……」
一瞬の安堵と新たな不安を同時に感じ、総代表のブルーの瞳を見つめる。
その瞳には恐怖の色を隠せない私の姿が映っていた。
「そう怯えるな」
もう片方の手で器用に一つ目のボタンが外される。
障害物がなくなり、指は再び下へと降りてゆく。
「ひゃぁ…っ」
二つ目。
さらに下へと……。
「もう……やめ…て」
全く聞く耳を持たない総代表。
「フン。もはと言えばお前が悪い」
三つ目に手が伸びる。
「いやぁっ!」
ガコン
「ぐあっ!」
え、ガコン?
いきなり聞こえてきた鈍い音。
そして、総代表は何があったのか私の方へと倒れてきた。
「えっ!ちょっと重いんだけど!総代表!」
反応なし。
どうやら気絶しているらしいけど。
「欲を出しすぎましたねミスター海馬」
「イシズ!」
なんとか頭を少しあげると、部屋のドアの前にイシズの姿があった。
そして、私のベッドの横には先程までなかった大きな金ダライが一つ。
「あなたは私の仕掛けた金ダライの罠にはまったのです」
「え……いつ仕掛けたの?」
「秘密です。それより。そんなものは窓から捨ててしまいましょう」
「いや。でもさすがにそれは……そもそも持ち上げられないし…ってイシズ!」
どさっと私の上から総代表を乱暴にどけると、そのまま窓の方へとずるずると引きずっていった。
「あのねイシズ!早まらないで!」
「駄目ですよ。全ては私のみたビジョンの通りにしなくては」
諭すように優しい笑みを浮かべて、イシズは総代表を背負い投げて窓の外へと……。
「ああああああっ!ホントにやったぁぁっ!」
冗談抜きで総代表を窓の外へと放り投げてしまった。
「これで全ては私の見たビジョン通り」
そんな、達成しました的な笑顔はいらないよ。
「イ……イシズ」
「さぁ。授業の準備をしましょう。私の見たビジョンによれば、今日は当てられますよ」
「え”……それは困る」
総代表の身よりは私の身の方が可愛い。
イシズに教えられながら、朝から教科書にかじりついた。
どんどんイシズが人間離れしてゆく。