デュエル学園シリーズ

大迷惑なホワイトデー




 まだ今日という日を迎える気はなかったというのに……。
 私は、目が覚めてしまった。

 時刻は朝の5時。
 それまで私は、夢の中で杏子と楽しくデュエルしていた。


 それなのに…………。



「フハハハハハハハ!」

 窓の外から聞こえてきたヘリの音と笑い声。
 その騒音に窓ガラスが震えあがる。

「凡人の小娘風情がこの俺のパートナーであれたことを、ありがたく思うがいい!」

 ヘリに備え付けてあるであろうスピーカーから、大音量で放たれる俺様な台詞。

 はぁ……こんなことをする非常識な人間は一人しかいない。

 私は飛び起きて、バンと窓を開けた。

「ええいっ!朝っぱらから、う・る・さ・い・わっ!」

 予想通り。
 私の視界にはオベリスク・ブルー総代表の海馬瀬戸の姿があった。

「フン。やはり凡人の小娘といったところか。
 もう少し品のある寝間着を着れば良いものを」
「黙れ」

 ぶんっと、枕をヤツの顔めがけてぶん投げた。
 が、たやすく片手でキャッチされてしまった。

 ……むぬぬ。悔しいじゃないか。

「この俺がわざわざ出向いたというのに……まぁよかろう。
 受け取れ!」

 言うが早いがヘリが上昇していく。
 そしてこの時、ヘリが総代表が乗っていた一機だけではないことに気づく。
 後ろに控えていた三機のヘリ。
 それらに繋がれて運ばれてきたモノそれは……。

「フハハハハハハハ!見るがいい!
 これが強靱!無敵!最強!ブルーアイズホワイトチョコレートだ!」
「…………」

 なんて、無茶を……。

 等身大ブルーアイズホワイトチョコレート。
 どうやって食せと?
 それ以前に、どうやって部屋に入れろと?
 いや、それ以前に何てモノを職人さんに作らせるんだこの人は。

「ふぅん。当日渡し損ねたキサマと違い、当日、
 しかも誰よりも早く一番初めに持ってきてやったぞ!
 フハハハハハハハ!」

 いやいや、ふんぞり返って言うようなことじゃない。
 それに、私は別に当日じゃなくても良いし。
 むしろ、こんな朝早くに起こされるくらいなら明日にして欲しい。

「キャー!瀬戸様よ!」
「本当だ!瀬戸様!瀬戸様ぁっ!」

 上下左右の窓から、女子生徒が次々に顔を出してきた。

「慌てるな。キサマらの分も用意している。磯野!!」
「ハッ。準備はできております」

 その一言で、ヘリからSPの人達が次々と女子生徒らに、可愛くラッピングされた包みを配り始める。

「あの、総代表。何で私だけ…コレなの?私もせめて普通のサイズのが……」
「甘いぞ!この俺のパートナーたる者。
 普通のモノで満足してはならん!」
「いや、でも……」
「それより、イシズはどうした?」

 ……イシズ?

 ふと、彼女のベッドを見ると。

「……耳栓して寝てる。さすが」
「なんだと!」

 イシズにも渡すのかな?

「イシズからもチョコもらったの?」
「ふざけるなっ!あれをチョコと言うのか!」
「……え」
「それ以前に、あんなものは食い物でもないわ!」

 ……何を送りつけたのイシズ。

「ヤツが目覚めたらコレを渡しておけ!絶対だぞ!」

 有無を言わさず私めがけて投げてきた箱。
 勢い余って私のおでこにあたる。

「ちょっ!痛いんだけど!」
「フン。のろまめ!俺は忙しい。もう行く」

 海馬君を乗せたヘリが去ると、他の三機もSPを乗せて去っていった。

「……全く、朝っぱらから」

 手にはイシズ当てのホワイトデーの贈り物。
 私のは……窓の外の……あぁもう見たくない。

「おはようございます
「あれ。イシズ起きてたの?」
「いえ。今、起きました」

 ……ホントに?

「あ。これ総代表から……」
「そうですか」

 そう言いながら、イシズは笑顔で受け取ろうとしない。

「……イシズ?」
「そうですね。が持っていた方がよいでしょう」
「え、でも」
「この私が言うのです。持っていた方があなたのためですよ」

 イシズと総代表の間でやりとりされている物は、……一体なんなんだろう。

「いいですか。あなたが危険だと思った時、リボンをほどいて相手にコレを投げつけるのですよ」

 ……少なくとも武器の類であるらしい。











 キンコーンカーンコーン―−-‥‥




 授業が終わった。
 今日のマハード先生はやたらご機嫌で、居眠りしていても怒られなかった。

 ラッキー♪


 と、思ったのに……。


「お前は居眠りしていただろう。は残れ」


 ……そりゃないぜ先生。






「……先生。授業中注意しなかったくせに」
「注意されたら居眠りしなかったのか?」

 いえ。注意されても私はぐっすり寝ます。

「まぁ。そのこともあるのだか、今日に残ってもらったのは他に理由がある」

 いつも以上の笑顔。
 ……これは、嫌な予感。

「ホワイトデーのお返しということで、ブラックマジシャンガールの衣装を作った。
 さぁ。今すぐ着てみてくれないか?」
「先生それお返しになってません。しかも作ったって……前から持ってたじゃないですか」
「わかっていないな。改めてお前のサイズにぴったり合わせたのだ。
 少しでもサイズが合わないと、うかっり見えてしまうからな。
 随分と気を遣ってやったのだぞ」

 そんなところに気遣う前に、もっと気遣わなければならないことがあるんです先生!

「しかも、胸元のこの飾りは押せば登場BGMが流れるという機能付き。
 ここまで弟子を思う師匠は他にいまい」

 もう駄目だこの担任。

「さぁ。今すぐ着替えてみてくれ」
「……えと、ですね先生」
「お師匠様だ。
「…………」

 マハード先生に退きに退いていると、いきなり教室のドアがガラリと開いた。

「今です!今こそアレを使うのです!」

 凜とした女性。イシズだった。

 アレ?……あぁアレか。

 片手で鞄の中を探り、目的のモノを手に取る。
 リボンをほどいたソレ。総代表がイシズに宛てたもの。

 ……少し躊躇ったが先生の額めがけて投げた。


「なっ!何をする!うっ……これは……っ!くしゅんっ!」

 マハード先生を中心に舞う粉。
 この鼻にツンとくる、このにおいは……。

「こ、コショウ?」
「よくやりましたね。これでしばらくは大丈夫ですよ。
 今の内にお逃げなさい」
「あ、うん」
「おい待て!……〜っ!くっしゅん!っくしゅん!」

 ごめんね先生。
 でも、私まで先生のコスプレに巻き込まれたくない。

 私は一目散に教室を後にする。

 廊下を走りながら、私はもう一度、総代表はイシズから何をもらったのかを考えた。

「これから考えるに、……少なくともチョコじゃないよね」










というわけで、海馬君とマハードでホワイトデー編。
「海馬君でホワイトデー」とくれば、やはり「ブルーアイズホワイトチョコレート」でしょう。
そして、マハード先生は期待を裏切りませんvそんな人です。


あれ?バクラは?

バクラはイベントを大切にするような人じゃなさそーですよね。(自分がもらう時は別)
バクラにはお返しを期待してはいけないのですよ。




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