デュエル学園シリーズ
甘いようで甘くない
甘いお菓子に囲まれながらお仕事なんて……
あぁ!私ってなんて幸せなんだろう!
……なんて、浮かれてた私を殴りたい。
了さんと契約してあれから丁度一週間。
お菓子のほとんどは、笑顔が素敵な了さんが作っいて、
休憩の合間にもらえたりするのは嬉しいんだけどね。
問題なのはお客さん。
「え。何あのガキ」
「うちらの王子に慣れ慣れしくすんなよ」
「うざーい」
人手足りない理由がよくわかりました。
前にお客さんとして来た時はわからなかったけど、
了さんとバクラ君を除く店員へのお客さんの態度がヒドイ。
「お待たせ致しました。苺パフェでございます」
にっこり。
何度も鏡の前で練習した営業スマイルを披露してみたら、
「遅いっつーの!」
「しかも、持ってきたの了じゃないしー」
「え。バクラはどうしたの?」
「……なんだ、またあんたなの?」
などと平気で言ってくる。
……何こいつら。一日一回は来るんだけど。
てか、このスイーツ店に何を求めてやって来てるのかと問いたい。
メイド喫茶でも執事喫茶でもないんだからね!
私の予想以上に、了さんとバクラ君の人気はすごいらしい。
「はぁ……どうしたものかなぁ……」
正直お客さんが酷くてやめたいなぁ。
なんて思うけど、
「どうしたのちゃん?疲れちゃったかな?」
「あ。大丈夫です」
この王子様が笑顔で微笑んでくれる限り、やめられそうにない。
あぁ。もう。今日も笑顔が素敵だよ。うん。
「そう?無理しないでね」
「ありがとうございます」
「そういえば、ちゃんの制服サイズ合ってないよね」
「え。でも少し先を折ってるので大丈夫ですよ」
私が着ている制服は了さんやバクラ君と同じデザインで、男女一緒。
「僕が働いてる店には女性の店員はあんまりいなかったし、
みんなやめちゃって、今は君だけだけど、やっぱり女性専用の制服作った方が良いよね」
了さんは私を上から下まで見て言った。
ちょっと、そんなに見られると恥ずかしい。
それに、自分でもこの制服似合ってないってわかってるから、
あんまり見ないで欲しい。
「そんな。わざわざ作らなくても良いと思いますよ?」
目を合わせられなくて、少し視線を了さんから逸らす。
「でも、もうデザインはできてるんだ」
「え?」
キラキラ。と今までにないくらい笑顔がまぶしい。
「せっかくだから君に合わせて作りたいんだけど、寸法はからせてもらえるかな?」
ぼぅっとして、思わず首をたてに振りそうになったけど、
寸前のところで、思いとどまる。
え。
寸法を測る?
誰の?
もしかして、
……………私のですか?
「駄目かな?」
うっ……その首をかしげる動作がまた……!
「え、でも、私基準で作るんですか?」
「勿論。ちゃんのために作るんだからね。
僕、こういうのを作るなら徹底したいんだ」
「了さんが作るんですか!」
てっきりどっかの業者に頼むのかと。
「僕ね。結構器用なんだよね。こういうのを作るのも好きだし」
「……すごいですね」
「で、駄目かな?」
そんな顔でおねだりしないで下さい。
り、理性が……。
「ごめんなさい。やっぱり恥ずかしいです……」
相手は男性で、しかも了さんだ。
できるわけがない。
うぅ……せめて私がもう少しナイスバディだったら……
「そっか。……そうだよね」
しゅんとしてしまった了さん。
「楽しみにしてたんだけどな」
それはとても純粋な言葉で、私の胸を貫いた。
そうだよね。バクラ君と違って了さんは何もやましいことなんてない。
ただ純粋に、服が作りたかっただけなんだよね。
「了さん。私、その、あんまり体型良くないですけど、
目の毒になるような人間ですが、了さんがそれでも構わないのなら……私」
「ありがとう!じゃぁ。さっそく計ろうか!」
あれぇ?さっきの悲しげな顔は一瞬ですか?
立ち直り早くないですか?
「ほら!早く早く!楽しみだなっと♪」
なんかうまく乗せられてしまったけど、
やっぱり了さんの笑顔には敵わない。
で、次の日にはもう完成してるなんて。
了さん。徹夜したの?
本業はどっちですか?
「おはようちゃん。早速だけど制服着てみてくれないかな?」
今日も了さんの笑顔はまぶしい。
けど、それ以上に………。
「これ……制服ですか?」
フリフリヒラヒラでぎりぎりのスカートの短いメイド服。
うわぁ……らぶりぃ……
「うん!可愛いよね!僕、徹夜して頑張っちゃった♪」
くらぁ〜。
め、めまいが……。
「見て見て!制服に合わせてカチューシャも作ったんだよ!」
……うん。可愛いよ。
目が痛くなるくらいにね。
くっ……私にはまぶしすぎるよ。
「僕ね。一生懸命頑張ったんだよ。着てみてくれるよね?」
断ろうとした言葉は、了さんの笑顔で戻される。
あぁ!もうっ!
ほんと。了さんには敵わない。
了さんは天然王子様キャラクターで良いと思う。
けど、相当なオタクで良いよ。