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悪夢+妄想=

忘れられた悪夢-その5



「で。結局何があったんだ?」

「だから、蛭弧の勘違いだったと言っているだろう」

 目が覚めた時から、一二三がしつこく蛭弧と夢の中で何があったか聞いてきた。

 私は霜霞が入れてくれたコーヒーを飲みながら、適当にあしらっていたが、だんだんウンザリしてきたので、さっさとこの店を出て宿泊先へと帰ることにした。

 だが、一二三はまだ納得してないらしく、私を止めようとするが‥‥‥‥甘いな。

「一二三‥‥さすがにしつこいぞ」

 おでこにチョップを喰らわして、その隙に猛ダッシュで逃げ去る。
 一二三が何か叫んでいたが、追ってきてないところを見ると‥‥諦めたか‥‥。
 なら。もう走る必要はない。

 私は鼻歌を口ずさみながら、下宿先へと帰った。

 あぁ、良い月夜だ。

 











 ‥‥‥‥見事に覚えてなかったようだね。


「蛭弧!お前知ってんだろ!」

「‥‥‥‥うるさいな」

 が帰った後で、一二三がしつこく僕に尋問してきた。

 ‥‥‥‥‥‥本当にうるさいな。

「一二三。やけにしつこいね」

「‥‥‥‥うるせぇ」

 やれやれ。このまま騒がれ続けるのも迷惑だな。

「確かに彼女は悪夢を見ていたよ。‥‥僕も見てきた」



「‥‥‥‥やっぱり!」

「でも、彼女は夢の内容を一切覚えていない。無意識に彼女自身が自分を守っているからね。
 ‥‥‥‥夢の内容知りたいかい?」

「‥‥別に‥‥」

 おや。意外だね。

「‥‥‥‥大体想像がつくから‥‥いい‥」

 ‥‥そういうことか‥‥。

「ま。心配することはないよ。は自分なりに解決策を考えて実行している。
 過去の自分の一部を切り離して、心の奥に閉じこめておくことで今の自分を守る。
 ‥‥‥‥別に悪い事じゃないよ」

 臆病者がする行為。
 でも、大抵の人間がしていることだ。

「‥‥ってことは結局変わってないってことか?」

「そうだね」

「なんで‥‥」

「夢主の希望を最優先にしたまでさ」

 いささか僕に対する嫌味であったような気がしないでもないけど、一応彼女自身の答えだからね。

「‥‥のおやじさん。昔は良い人だったんだぜ。‥‥身分なんて気にしない。正義感溢れた人だった」

「過去形になってしまった感情なんて、今現在で述べても虚しいだけだよ。それが解っていって過去に浸っていたいのなら、僕は止めないけど」

「‥‥‥‥ほっとけ」

 ‥‥‥‥そういえば。

「一二三。現実ではの父親はどうなったんだ?」

「‥‥見てきたんだろ?」

「いや。所詮は夢だ。食い違う所だってあるよ」

 父親は母親に暴行を行い、その後家を出て行ったのなら、




 なぜの夢で、死体となって現れる?





「そのへんは俺もよく分からない。俺がかけつけた時にはすでに、おふくろさんの方は血だらけの状態で、無抵抗のの首を締めつけていた。
 その後。聞いた話だと、おふくろさんは、おやじさんの名前を叫びまくっているうちに、舌をかんで死んだらしい」 

「なら父親は行方不明というわけか。何処でどうなっているかなど、誰も知らないわけだ」

「‥‥‥‥‥‥‥‥あぁ、知らない」


 くっくっくっくっくっ‥‥下手な嘘だ。

「一二三、何か見たのかい?」

「‥‥別に‥‥」

「なら今度、に聞くか。無理矢理夢の中に入って探索して‥‥」

「なっ‥‥!」

「‥‥‥‥冗談だよ。そこまでこだわっちゃいない。‥‥それに大体想像はついてるよ」

 そう。彼女の夢の中で何となく解った。 














「父親は殺されたんだろう?」




 クスクスと笑っていると、店の扉が開く音が聞こえた。




 ‥‥カラン♪


「すいません。こちらに貘がいるって聞いてきたんですけど‥‥」

 ‥‥どうやら次の客か。

「ええそうですよ」

 僕は何事もなかったように、次の客の話を聞き始める。

 興味がないわけじゃないけど。
 ま。ようは悪夢が喰えればいいってことだ。




これってドリームって感じの作品ですみません。
見直してみると、矛盾がすごいし分かりづらいにもほどがあったので、少し修正しました。


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